「8月9日」と「Lighthouse Hawaii」誌の戦争特集
ハワイのローカルフリーマガジンの「Lighthouse Hawaii」は毎年終戦記念日の頃になると、太平洋戦争とハワイの関わりについての特集されます。この特集が素晴らしく、それについて思うことを書きました。
こんにちは。ハワイ在住フォトグラファーのマルです。
ハワイにはたくさんのローカルフリーマガジンがあります。日本語のものだけでもざっと思いつくだけで10誌くらいあるかな。そのうち幾つかは撮影の仕事をさせてもらっていてますが、今日皆さんに紹介したい「Lighthouse Hawaii」誌は残念ながらまだお仕事のお付き合いはありません(そもそも読み物主体の雑誌なのでカメラマンが必要な場面がそもそもなさそうですが)。
でも僕はこの「Lighthouse」さんの大ファンです。隔週発行ですがハワイ在住者に本当に役に立つ記事が満載。毎号欠かさず読んでいます。
とにかくハワイ在住日本人目線の有意義な特集ばかりで、最近の印象的な特集だと
「アメリカ&日本の大学進学事情2016」
「健康になる食習慣」
「引退者用住宅施設」
「老齢の親をアメリカに呼び寄せるHow To」
などなど。
まさに名前のとおり、ハワイ在住者には(少なくとも僕にとっては)、海外生活という名の航海における欠かせない”灯台”になっています。しかもこれだけ硬派な情報を、ビジネスベースにしっかりとのせて継続して我々に無料で伝えてくれてるわけですから、はっきり言って尊敬に値します。
最新号の特集「今こそ語り継ごう! 75年前のストーリー」の読み応えがハンパない!
さて先にご紹介した表紙のように、最新号の特集は「今こそ語り継ごう! 75年前のストーリー」です。75年前の1941年は日本軍の真珠湾攻撃によって開始された太平洋戦争が始まった年。昨年日本では戦後70年ということでメディアでもこの時期にさまざまな戦争に関する特集が組まれていましたが、今年は開戦から75年なわけです。
毎年「Light House」さんは日本のメディアでもよくやっているように、終戦の時期に合わせて太平洋戦争の特集を組んでいます。この「Lighthouse」さんの戦争特集が毎回とても読み応えがあるのです。今回も7人の語り手による戦前戦後の物語がそれぞれ1Pずつじっくり紹介されています。先ほど撮影から帰って疲れていたのですが、読み始めたら一気に読んでしまいました。
興味のある方はハワイで手にとってぜひ読んでください。そしてハワイに来れない方も、「Lighthouse」さんはネットの電子ブックとして読むことができます(ライトハウス最新号の電子ブック ↓ ↓ ↓)
戦争、日系人、そして今に続くハワイ
ハワイは先の戦争で多大な影響を受けた場所です。
◯太平洋戦争の開戦の地、真珠湾がある(ホノルル空港の隣です)
◯地図を見ればわかるように日本とアメリカの中間にある
◯開戦時のハワイの人口。その37.3%は日系人だった
という複雑な因果が絡み合うこの地ではさまざまな苦難のドラマが生まれました。
その一端は「Lighthouse」の戦争特集でも感じることができますが、人口の4割を超える住人の母国から攻撃を受けるその衝撃たるや。。。アメリカ人もそうでしょうが。それ以上に当時の日系人の方たちの衝撃は計り知れないものがあったことでしょう。一瞬にして、自分の住んで居る国の敵の人間になってしまったわけですから。
開戦後ほどなくして日系人は強制収容場に入れられ、日系移民開始以来の最悪の状況に置かれます。全ての財産を接収されての厳しい生活環境。そして吹き荒れる偏見の嵐。その苦難は想像に絶します。しかしその中でもめげずに彼らにとっての母国、つまりアメリカに忠誠を尽くそうと日系人の多くが立ち上がます。そして志願した日系人兵からなる「第100歩兵大隊」が誕生。その後ほとんど日系人で編成された「第442連隊」は、ヨーロッパ戦線で多大な犠牲を払いながらも大きな戦功を挙げました。なんとアメリカ合衆国史上もっとも勲章を受けた部隊となったそうです。
日系人部隊の戦争での活躍。そして戦後のアメリカと日本の間に立っての関係改善と復興への貢献。移民の先人たちの努力こそが、今日本人にとって居心地のいいハワイにつながっているのは間違いありません。ハワイに住んで居るとハワイの歴史に触れることは当然あるわけですが、明治時代のサトウキビ移民から始まる日系人の努力と功績は自分も含めた現代の移民の誇りです。
被害者と加害者。日本人観光客とアメリカ人観光客。そのギャップについて。
突然ですが、みなさん「トリップアドバイザー」を利用したことはありますか? 世界のあらゆる旅行情報、口コミ情報が網羅された、旅行好きには欠かせないサイトです。
このトリップアドバイザーにおいて「オアフ島で人気の観光スポット ベスト5」は何だと思いますか?
ワイキキビーチ? ダイヤモンドヘッド? 天国の海? アラモアナセンター? 魅力的な観光スポットがいっぱいのオアフ島ですが、答えはこちらです。
1位 アリゾナ・メモリアル
2位 真珠湾
3位 ダイヤモンドヘッド
4位 国立太平洋記念墓地
5位 ワイキキビーチ
実は1、2、4位が戦争がらみの場所です。トリップアドバイザーのこの順位は、日本人を含めた全旅行者の興味、実績を反映しています。ハワイは日本人観光客が多いですが年間総数は約150万人。対してアメリカ本土からの観光客は年間約500万人。アメリカ人の多くがハワイ観光の際に真っ先に行く場所として、上記の戦争にまつわるスポットを選んでいる。その結果がこの順位となっているのでしょう。
しかし日本人はどうでしょう? 観光客数の比率からすれば日本人1:アメリカ人3.3 です。上の戦争にまつわるスポットを訪れる人の3〜4人に1人が日本人なのでしょうか? 僕は撮影と仕事で何度か足を運んでますが、ほとんど日本人を見かけません。割合としては10人に1人? いや20人に1人なのかな。僕が撮影で携わっている日本の雑誌メディアでもその扱いはほとんどありません。。。
こと真珠湾攻撃に限って言えば日本は加害者です。この攻撃で民間人を含めて約2500人の人が亡くなっています。ですから日本人として行きづらいというのもあるでしょう。短い日程で訪れるせっかくのハワイ旅行にそんな場所には行きたいくないという気持ちもわかります。でも”完全スルー”でよい場所なのでしょうか?
8月9日 長崎の原爆の日に思う
これはあまり人に話したことはありませんが、僕は小さな頃から戦争に興味がありました。といってもミリタリー趣味というわけではなく、歴史としての戦争です。戦争もののドキュメンタリーや映画をよく見るし、戦跡なども人よりも興味を持って訪れています。なぜかというと僕の父がよく戦争の時の話を小さな頃に話してくれたからです。父は昭和16年生まれで長崎県長崎市出身です。終戦時もまだ4歳でしたから本人もそれほどの記憶があったわけではないでしょうが、祖母から聞いた話なども交えて、子供らによく話をしてくれました。
父は僕が大学3年の頃に52歳で急性白血病で亡くなりましたが、遺品を整理しているときに「被爆者健康手帳」が出てきました。戦争の話を聞いたときに父親が被爆者と言っていた記憶はないし、母も20数年一緒にいて知らなかったそうです。どれだけの被曝だったかはわからないですが、特に健康で問題があるわけではないから話してくれてもよかったと僕は思います(死因の急性白血病も被曝に起因されるものではない)。しかしきっと本人にしかわからない思いから、ずっと伏せていたのかもしれません。
今日、この原稿を書いている9日は長崎に原爆が落とされた日です。セレモニーでは被害者の立場から世界に向けてメッセージが発せられます。原爆の悲惨さを知ってほしい、核はいらないと。特にそれはアメリカに向けて。父が被爆者であることから、自分もそれは切に思います。
そして真珠湾の話に戻りますが、だからこそ自分が加害者(に属している場合)の場所も目を背けるべきではないと感じています。戦争は被害者、加害者を生み、戦争ですから時と場合でそれは入れ替わり、そして被害者も加害者もいずれも不幸になります。だからお互いのことを知って、過ちを繰り返さないことが大切なはずです。知るために目を背けずに訪れる。大げさではなく、平和への一歩ではないでしょうか。
8月9日。いつにも増して蒸し暑いハワイの夜。そんなことを考えさせてくれた「Lighthouse」さんに感謝です。
Photo & Text by TOMOHITO ISHIMARU (石丸智仁)
出典:アロハフォトアカデミー&ツアーズ | アロハフォトアカデミー&ツアーズは、ハワイ・オアフ島のステキな写真を撮っていただくツアー形式の写真講座です
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ハワイ・オアフ島で写真好き、ハワイ好きの方のためのツアー形式の写真講座を開催しています。現地在住プロカメラマンがオアフ島のフォトジェニックなポイントを1日かけてご案内し、現地で直接撮影方法を指導します。スマホ参加大歓迎。SNSにアップする素敵な写真が撮れます!
出典:TOMOHITO ISHIMARU PHOTOGRAPHY〜ハワイ在住写真家〜石丸智仁のホームページ
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ハワイ・ワイキキ在住フォトグラファーのTOMOHITO ISHIMARU(石丸智仁)です。
こちらでは”Maru”と呼ばれています。
東京で13年間の出版社カメラマン生活を経てハワイに移住。
現地で日本やローカル向けの雑誌、広告等の撮影をメインに活動しています。
日本の書店に並んでいる女性誌や男性誌のハワイ特集、旅行雑誌、ガイドブックなどで僕の写真が使われていますのでぜひチェックしてみてください。
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ハワイのフリーマガジンだけど最新号の表紙はハワイっぽさゼロ。硬派です。